2015年11月16日月曜日

北野武と涙

北野武『あの夏、いちばん静かな海。』(1991年)を見る。何度見ても最後で泣いてしまう。叙情的なものは嫌いではないが、センチメンタルなものは大嫌いで(もっとも、もっとも好きな音楽家のひとりであるセロニアス・モンクのレパートリーのなかで、いちばん好きなのは本人の作曲ではないI'm getting sentimental over youなのだが)、北野武というと暴力描写を連想してしまうが、叙情性が背中合せに隣り合っていることを忘れてはいけないと思う。

ところで、泣いてしまった映画を一生懸命思いだそうとしてみたのだが、一本も思いだせなかった。もっとも、蓮実重彦やライムスターの宇太丸のように、映画的教養はないから、映画的無意識が呼応してさめざめと泣くようなことはないのだが、それにしても、泣いたことがないはずはない。『攻殻機動隊』のテレビ・シリーズで、タチコマが『僕らはみんな生きている』を合唱しながら、自らを犠牲にするところではいつも泣いてしまうが、そういえば、ジブリでいちばん好きな『千と千尋の神隠し』ではほろりときたが、泣くまでいったかどうか。まったく思いだせないところを見ると、割とつまらぬ映画で泣いているのかもしれないが、自慢にもならないが号泣した記憶はまったくない。



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