2015年11月12日木曜日

『クロッカーズ』と和泉式部

スパイク・リー『クロッカーズ』(1995年)を見る。クロッカーはちょろまかす者くらいの意味だろうか。麻薬の売人が殺されるが、自首してきたのは、誰に聞いても評判のいい人物だった。ハーヴェイ・カイテル演じる刑事は疑問をいだき・・・内容はシリアスだが、冒頭と最後に流れるメロウな音楽といい、決定的な場面のスパイク・リー的な演出といい、寓話的な雰囲気であり、よくも悪くもむき出しなリアルな感じはしない。

「物思へば沢の蛍も我身よりあくがれ出づる玉かとぞみる」は和泉式部の和歌で、ろくに短歌など知らない私でさえ知っている(空では言えないけれど)。しかし、「奥山にたぎりて落つる瀧つ瀬の玉ちるばかり物な思ひそ」というきふねの明神の返しがあったという物語になっていたことは知らなかった。『古今著門集』などに出ているらしい。
思いついたので一首、
親王のおわさぬ御代で吐く玉は朱色に染まる海岸線に満ち
親王は高丘親王のこと。澁澤龍彦の『高丘親王航海記』から取りなしたわけです。



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