2016年8月22日月曜日

北斎の辞世の句

北斎の辞世の句

人魂でゆくきさんじや夏の原

「夏の原」というのが素晴らしい。

2016年8月21日日曜日

芭蕉の好物

芭蕉はこんにゃくと柿が好物だったらしい。潁原退蔵によると、こんにゃくは豆腐と違って、「貧厨にふさはしい食物である。芭蕉はそのわびしさを愛したのであろう」(「芭蕉断片」)と書いている。

菎蒻のさしみもすこし梅の花
菎蒻にけふは売勝つ若菜哉

2016年8月16日火曜日

アイスランドの蛇

南方熊楠によると、アイルランドは蛇がいないことで名高い。

アイスランドもまた蛇がいないそうで、ボズウェルの『ジョンソン伝』には、博士曰く、自分はホレボウの『氷洲(アイスランド)博物誌』の一章を暗唱することができるという。そこでお願いすると「第五十二章 蛇のこと、全島に蛇なし」(『十二支考』)

ちなみに、それとの関連で、すぐ後に、ド・クインシーのことがあげられていて「例の変態精神から心得違うて・・・」と書かれているのだが、「変態精神」というのはなんのことを指しているのか、少女趣味のことか?

2016年8月14日日曜日

式亭三馬の辞世の歌

抹香臭い歌が嫌いだと前に言ったが、三馬の辞世の歌はくだらなくていい、

善もせず悪もつくらず死る身は地蔵も誉ず閻魔しからず

芭蕉の最初の句

芭蕉の生まれ故郷である伊賀で古くから言い伝えられているところによると、芭蕉は十四歳のとき最初に発句をよんだ、という。

犬と猿の世の中よかれ酉の年

犬猿の仲というのと、酉年の前は申、後は戌なので、酉が両者を取りなして、よい年になるように、ということらしい。

2016年8月13日土曜日

蜀山人の辞世の歌

時鳥なきつる片身初松魚春と夏との入相の鐘

素敵。
辞世の歌でも抹香臭いものは趣味に合わない。
恋川春町の

味く食ひ暖かく着て何不足七十七南無阿弥陀仏

七十七は「ななそぢななつ」と読む。大往生の歌ですからご愛敬ではありますが、どちらにしても釈教の歌はあまり好きではない。

鬼貫の句

春の水ところ〴〵に見ゆる哉

言葉通りの句だが、「繰り返し〳〵誦してみると、夏の川にも秋の水にも感ぜられない長閑な気分が、どこからとなく湧いて来る。」(『名句評釈』)という潁原退蔵に賛成。

小西来山の句

小西来山は大阪の人で、前川由平の門人。享保元年に六十三歳で死んだ。

白魚やさながら動く水の色

バタイユが『宗教の理論』で動物性について論じた箇所を思い起こさせる。
別の版では下五が「水の魂」となっているらしい。
潁原退蔵は「その方が更に神秘的な感じが加はつて宜いと思ふ」と書いているが(『名句評釈』)断然反対。

2016年8月11日木曜日

マカロンと飴

マカロンなど最近知ったもので、とくにうまいと思ったこともないが、あるいはヨーロッパで食べれば格別の味わいがあるものかもしれない。
鷗外はイプセンの『ノラ』を訳したが、そこにはノラがマカロンを食べる箇所があって(鷗外は「マクロン」と書いている)、マクロンと書いたが、わかりにくいと思われたのか、飴玉にすればいいと教えられた。(「翻訳に就いて」大正3年)ちょっと口に入れるものだから似たようなものだと思ったのかどうか、「あつとばかりに驚かざることを得ない」のが鷗外。確かにマカロンと飴とはまったく違っている。意味合いも異なりそうだ。鷗外が「マクロン」と訳したときにもすでに、青木堂というところで輸入されていたらしい。

森鷗外と俳句 

鷗外は、去来の「秋風や白木の弓に弦張らん」という句がひどく気に入って、こうした句をつくってみたいと思ったが、できたことがないという。(「俳句と云ふもの」明治45年)