歯朶の葉を初狩人の箭に負いて 野水
前句を見ると、言葉の上では人はでていないが、実際には人がおり、人がいるからこそ氷も破られ、水もほとばしる。この句はその人を新年に初めての狩りにでる人として、いさぎよい景色をあらわしている。歯朶は裏が白いので裏白ともいって、新年の飾りに用いることは知られている。
歯朶だけでなく、草木の枝葉を笠などにかぶって、鳥獣の目を避けるのは狩人の常であるが、ここでは新年の春のことほぎに、歯朶の葉を矢を入れる容器にかけて、今年も山の幸あれと祝い立つことを言っている。前句は冬、これは春、季の移りは難がなく、興趣は新たで、絵のようになってもおり、詩としても成り立っている。それらを見て、かつ思うべきである。この第三句、発句脇句の絢爛幻奇とは異なり、平生淡雅の句ぶり、変化の働きを特に賞翫すべきである。
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