紙燭は紙をよって、細い枝のようにしたものに脂蠟を滲ませたもの、松のひでを細くけずって一尺ほどの長さにし、手に取るところに厚い青紙で巻いたものをもいう。前者は江戸時代のころ民家で用いられ、後者は平安朝のころ宮中で用いられた。後者は脂燭と書いて前者と区別することもある。ここのは前者のものである。
一句は、「鳳凰楼老碧梧枝」を「碧梧楼老鳳凰枝」とつくったような倒叙の法であって、紙燭をともして、鶯起きよと呼びかけたものである。「鶯起きよと紙燭ともして」と「と」を加えると、鶯を起すために紙燭をともすことになって、鶯起きよと呼びかけることはなくなる。前句を元日と大晦日との境くらいのときと見て、鶯を飼っているものの夜の様子をつけた。場所は大名の奥と解してもいい。
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