2013年12月6日金曜日

ソポクレス『アイアース』



 トロイア戦争の末期、アキレスの鎧はオデュッセウスに贈られることになり、アイアースは自分が軽視され、屈辱を与えられたと感じ、ギリシャ軍の司令官たちを皆殺しにすることを決意する。

 女神であるアテーナーは、牛や羊などの家畜をギリシャの司令官であるという幻覚を与え、アイアースは家畜類を殺してそれらを自陣に持ち帰る。やがて幻覚から覚めたアイアースは、自分がしたことによってギリシャの戦士たちに嘲笑されると信じて、苦しみのあげく自陣を出て行ってしまう。

 アイアースの異母兄弟であるテウクロスは、ギリシャ陣で、アイアースは一日のあいだ自陣を離れてはならないこと、離れてしまうと死が待ち受けていることを聞く。そこで急いで使者を送るが、すでにアイアースは自陣を離れており、ヘクトールにもらった剣の柄を土中に埋め、突き出た刃に身を投げて自害していた。

 アガメムノンなどのギリシャの司令官たちは自分たちに害を及ぼそうとした行為のことを考え、アイアースを葬ることなくそのままに放置しておくように命ずる。

 だが、そこにオデュッセウスがあらわれ、敵であってもその高貴な死には敬意が払われるのであるから、アイアースにもその身分にかなった適正な葬儀がなされレルべきだとみなを説得する。

 適切に葬られることの必要性というのは(ラカンなどは、身体的及び象徴的に、人間は二度死ぬ、といったが)日本や中国にはあまり見られないようだ。

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