ホバート位相といわれる現象によって、死者が蘇り、どんどん若くなり、やがては子宮に戻り、性交によって男性の精子に回帰する世界になっている。蘇った死者を墓から救出することをなりわいとしている主人公は、ユーディ教という巨大な宗教組織を創出した教祖を掘り起こした。
この教祖を得るための、ユーディ教を世俗化したいまの主導者とローマ教会と図書館との三つどもえの戦いに巻き込まれる。図書館は情報を次々に抹消していく消去局と組んで、なぜか強大な権力を握っており、教祖は彼らによって最後には再び死に追いやられてしまう。
ユーディ教については、神が万物の根源にあり、死も時間も幻影に過ぎず、悪とは神から遠ざかっていることから生じる不完全性からくるに過ぎない、ということだが、それを具体的に提示するイメージに乏しく、世界の変容よりはアクション的な要素が強く、そうした世界観が背景にとどまっている。そうした意味で、ディックにしてはそれほどできはよくない。
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