2013年11月15日金曜日

トーマス・オーウェン『青い蛇』

 絵画ではベルギー幻想派があるが、文学でも幻想派が存在するのだろうか。シュルレアリスムのように様々な芸術を包含する運動にまで高まっているのだろうか。いずれにしろ、ジャン・レーは読んだことがあるが、オーウェンははじめて読む。短編集で題だけをあげれば次の通り。

翡翠の心臓
甘美な戯れ
晩にはどこへ?
城館の一夜
青い蛇
モーテルの一行
ドナチエンヌとその運命
雌豚
ベルンカステルの墓地で
サンクト=ペテルブルグの貴婦人
エルナ 一九四〇年
黒い雌鶏
夜の悪女たち

アマンダ、いったいなぜ?
危機

 幻想文学といっても、男女の愛執の結末が怪異となってあらわれるといったものが多く、1980年に刊行されたらしいが、あまりに古典的で、ポオなどの方がかえって新しい。

 一番面白かったのは表題にもなっている「青い蛇」というショートショート程度の長さのものである。あるとき風景画と額縁のガラスのあいだに青い蛇がいるのを見つける。額のガラス越しにピストルで撃てばいいのでは、と父親に勧める。すると、父親はピストルを持ってきて、戸口から絵に向かって打ち始めるというだけの話である。

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