初見、傑作。
『ポーラX』はまだ見られないでいるが、『ボーイ・ミーツ・ガール』、『汚れた血』、『ポンヌフの恋人』と見て、まったく個人的な趣味の問題だが、趣味だから変えようはないわけで、あまりに恋愛的な要素が強いのに辟易していて、昔ながらのハリウッド映画のように、仲間意識を持っていた二人が、あるいは対立し合っていた二人が、最後に愛情を確認して終わるタイプの映画が大好きなためか(ホークスやヒッチコックやアステア=ロジャースの映画のように)、愛となるとThe Endの文字が浮かんで、愛し合う二人を描かれると、まだ終わらないのかとついつい思ってしまう私にとって、要するにカラックスは苦手だったのだが、まさにこんな映画を撮ってもらいたかったとついつい興奮したのが『ホーリー・モーターズ』だった。
豪邸から出勤するらしい男(カラックスの映画では常連のドニ・ラヴァン)が白いリムジンに乗り込み、今日の予定は、などと聞きながら、メイクをはじめる。
そして、その都度メイクを変えながら、物乞いになったり、ハイド氏のような凶暴なふるまいに及び、さてまた殺人者になったりする。
なんの予備知識も持たず見たので、最初はなにが語られているのかわからないのだが、一時間も過ぎるあたりになると、この映画が、たとえばデヴィッド・リンチの映画のように、不可解な謎をめぐって進行するものではないことに気づきはじめる。
ある種監督が不在であるフェリーニの『81/2』のような映画なのだ。
ついでにいえば、ロカルノ映画祭でのカラックスへの公開インタビュー(観客からの質疑応答を含む)も見て、いかにも取っつきが悪そうで、質問にも、誠実なあまり、期待されるような答えを一切返さない姿を見て、その人物も大好きになってしまった。
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