2015年12月2日水曜日

エクソシスト、西鶴、ホラー

『エクソシスト』で、公開時にはカットされたシーンに、少々おかしくなってきたリンダ・ブレアーが、ブリッジをしたままの姿で素早く駆け寄ってくる場面がある。現在では長尺版で見ることができるが、やや唐突で誇張された表現だったためにカットされたのかどうか、詳しいことは知らないが、はじめて長尺版を見たときには、もっとも怖い場面の一つとして印象に残っているのは、あるいは後に日本のホラー映画でそのヴァリエーションを様々に見せつけられたからかもしれない。ある意味、先駆的な表現だったわけで、カットしたのがよかったのか悪かったのかいまだによくわからないでいる。

ところで西鶴の『諸国咄』巻一に「見せぬ所は女大工」という一篇がある。御所の奥向きともなると、大工といえども男を入れるにははばかられるところが多く、女の大工が呼ばれ、寝間である座敷をすべて打ち壊すように命じられた。まだ普請したての座敷で、不審に思ってその理由を尋ねると、天上に、色の黒いおたふくのような顔をした四つ手の女が這いまわるという。そこで、様々な物を打ち外してみたが、特に変わったところはない。残ったのは叡山からもらったお札をはった板だけである。下ろしてみると、かたことと動いている。驚いて、板を一枚ずつはがしてみると、七枚下に長さ九寸ほどの守宮が、胴のあたりを釘で打たれて、紙ほどの薄さになってまだ生きて動いている。燃やしてしまうと、それ以後おかしなことは起きなくなった。守宮が起こした怪異としてしまうと、理に落ちた感もあるが、翻って考えると、守宮でさえこんな恐ろしい怪異をもたらすなら、なにが怪異の原因であってもおかしくないことにもなる。



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