酒の飲めない平岡正明が、仲間たちと旅行に行った際、つい一杯飲んでしまい、既に極真空手に通っていた頃で、突然目をさますやいなや、奇声をあげて目にとまった人物に蹴りを入れたことを恥じ入る文章をどこかで書いていた。
酔態が恥ずかしかったわけではなく、作家だけに手と意識とは直結していることを感じるが、蹴りというのは無意識の占める部分が多く、稽古でも蹴りを繰り出すことに抵抗感があったのに、こともあろうに慣れぬ酒を飲んだとはいえ、日頃の訓練では躊躇していた蹴りをいの一番に繰りだして、いわば無意識を無防備に晒したことを恥じたのだった。
もっとも横山一洋の『ハイキック・エンジェルズ』(2014年)となると、少なくともヒロインの一人は蹴りが中心なのは、題名が示しているとおりで、ドラマはむちゃくちゃだし、売りのアクションも『チョコレート・ファイター』などと比較すると残念な仕上がりだが、それほど酷評したくないのは、なにがしたいのかはっきりわかるし、目的がわかるから、それにどれだけの労力と資金が必要なのかまではわからないが、より目的に近づいた姿も想像できるからで、なにがしたいのかさっぱりわからない超大作などよりはずっといい。
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