『万載狂歌集』から大田南畝の狂歌を三首。
はるのはじめに
くれ竹の世の人なみに松たてゝやぶれ障子を春は来にけり
放屁百首歌の中に款冬
七へ八へへをこき井手の山吹のみのひとつだに出ぬぞきよけれ
述懐
いたづらに過る月日もおもしろし花見てばかりくらされぬ世は
「七へ八へ」は『後拾遺和歌集』、雑五、中務卿兼明親王、 小倉の家に住んでいたとき、雨が降った日、蓑を借りにきた人があったので、山吹の枝を折って渡した。その心を問われて返事に曰く、といった詞書きがついて、
七重八重はなは咲けども山吹のみの一つだになきぞかなしき
とあるのからきている。
太田道灌でも似たエピソードが語られる。
『道灌』という落語のネタもある。
八五郎と隠居、自分の長屋に帰った八五郎と尋ねてきた男、と登場人物が少ないためか、前座噺とされている。
隠居に太田道灌のエピソードを聞いた八五郎は、山吹を渡した娘と同じことをしてみたいが(『青菜』などと同じく、真似をしようとして失敗する噺である)、尋ねてきた男は提灯が借りたいので、蓑を貸して欲しいわけではない。そこで八五郎が思い描いていたシナリオが崩れてしまって・・・
先代の小さんと、立川談志が演じたのも聞いたような気がするが。
「款冬」は「かんとう」とも読むが、山吹の異名で、「やまぶき」と読むことが多い。
井手は京都にある地名で、山吹の名所として知られていた。
現在でも山吹は井手町の花に指定されている。
この狂歌は談志の素噺、『蜀山人』でも引かれていたような気がするが、ちょっとCDがすぐにはでてこない。
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