2014年8月7日木曜日

ブラッドリー『論理学』58

 §33.心的病理が例となろう。主体、あるいはこう言った方がよければ、自我が二つに分裂したように思える事例がある。一方があらわれているときには他方は隠れており、それぞれの記憶は別々である。両者の過去や未来は触れ合うことがない。これに関して呈示され、十分だとも思える説明が我々の主題を例示してくれよう。現在の自己が異なっているために、過去と未来の自己も異質なものである。一方の観念体系が他方の観念体系とつながる地点をもっていない、あるいは、つながりを排除するような地点をもっていないために、一方は他方に属している現在を観念的に拡大することが決してできない。現前に与えられる病的な感情や病によって歪められた知覚は同じような特徴をもつ観念のグループに結びつく。このように色分けに失敗した観念の領域は現在の知覚との連続的な関係を確立することができないと思われる。

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