§39.唯一無比であることは、「これ」という観念の単なる否定的な側面である。種類(内容の観点から見た意味)が同じようであっても同一なものはないのが唯一無比で、その種類にたった一つしかない。唯一無比は系列の観念を含んでおり(29)、相対的か絶対的かである。系列が他の要素を排除する要素を含み、それ自体は唯一無比では
ないときには相対的である。空想でどんな宇宙を作り上げたとしても、そこでの事物はその宇宙の内部においてのみ唯一無比となりうる。他方、系列が直接的な現前に関係しているときには絶対的な唯一無比を得る。この場合、系列内部の関係はそれが関わる諸要素を固定し、この系列にあらわれないものは事実ではあり得ないことになる。しかし、唯一無比という性格をもち、他のいかなる出来事をも排除する真の主語は、個別的な出来事そのものではないし、そう捉えるものでないことは記憶しておかねばならない。実在とは、むしろ、この個別的なものにあらわれ、他を排除するところのものである。我々がここで得るのは否定的な存在判断であるが、その性質については第三章で考えることにする。
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