2014年4月2日水曜日

幸田露伴『七部集評釈』16

黄昏を横に眺むる月細し  杜國

 一句の情、前句との係り、解釈に及ぶまでもなく明らかである。淀の舟かなにかから三日四日ころの月を眺めたものである。いい景色の句である。古解で、「この場所は淀川堤で、人物は遊びがてらの山歩きからかえったもので、酔っぱらった無駄口に、どこの昼舟も皆川を上がってしまったのに、今頃のぼるというのは、あの船子はきっとちんばばかりなのだろうと笑う様だ」いうのは、前句の解釈を誤ったまま、引き続いてあらぬ方に力を入れて評釈したものである。前句を安らかに解釈することができれば、それが誤りであることは自ずからわかる。

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