2015年3月16日月曜日

ミネット・ウォルターズ『破壊者』


『女彫刻家』以来、ミネット・ウォルターズは現存するミステリー作家のなかでもっとも好きな作家のひとりである。
期待に違わず面白かったのだが、その面白さは通常のミステリーのものとは随分と違う。
『破壊者』と大仰な題名がついているが、誇大妄想狂と紙一重の、あるいは天才的な殺人者が出てくるわけでもなければ、鮮烈などんでん返しがあるわけではない。
ロンドンの西南、ドーセットのチャップマンズ入江で女の死体が発見される。
そこから連続殺人劇の幕が開くわけでもないし、別に種明かしになることでもないが、最初からの容疑者が犯人である(しかも、容疑者自体二人しかいない)。
最初にあがる二人の容疑者というのは、実際の殺人事件で当然容疑者にあがりそうな人物たちで、ミステリーなのだからそんなはずはない、といわばどちらの方向に話が流れていくのかわからない宙づりのまま結末にいたり、最後にそれらしい理屈はつくのだが、さほど説得力があるわけではなく、それよりは互いに意識し会っていた男女が無事結びつく方がより比重が大きく感じられて、宙づりの着地点としてはむしろそちらの方が正しいと思われるところが味噌である。

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