飛脚宿の養子の忠兵衛は、新町の抱え女郎梅川に惚れ込んで、水揚げしようとする田舎者のライバルがいるものだから、つい意地になって商売上の金に手をつけてしまう。それがたまたま友人の金だったものだから、義理の母親の責め言葉にもなんとか機転を利かせて救ってくれた。
ところがその友人が、その話を遊女たちの目の前で披露に及び、たまたまそれを聞きつけた忠兵衛は生まれつき頭に血の上りやすい性格、お屋敷から預かった三百両から五十両を叩き返し、残りの金で祝儀共々梅川の身請けの金にしてしまった。
もはや逃げるところまで逃げてあとは死ぬしかないと、大和は実父のところに帰るが、すでに追っ手は迫っており、お縄にかかる。
近松によくあるように、この作品も実際の事件をモデルにしたものだというが、梅川は刑死した忠兵衛に義理立てしてあとを追うこともせず、また店に出たそうだ。
実際、忠兵衛にはこれといって魅力がなく、五十両を叩き返すときには、こんなことをしても困るのはお前なのだから、やめておけ、と諫める友人の方がよほど義侠心に富んでいる。
それに、忠兵衛と梅川の深い間柄を象徴するような印象的なエピソードがないので二人の未来が切々と迫ってはこない。
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