2014年11月28日金曜日

幸田露伴『評釈冬の日』しぐれの巻13

忍ぶ間の業とて雛を作り居る 野水

 忍ぶ間は言葉遣いが少し不確かだが、潜み忍び入る間である。雛はひな遊びの雛である。どんな理由があったのかわからないが、都を出て片里に潜み住んでいる者が、することもないので雛をつくって生業としている。前句の紅買いに出たというのを、雛をつくるために絹などを染めようと少しの紅を買うために田舎の商店に行くものが小山越の道にかかっているところと見なしての句である。これでほととぎすを聞くことにも余情の移りがあり、転じかたにも非常に興がある。

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