こぶとりじいさん
・鬼にこぶをとられること。目の上に大きなこぶをもった禅坊主がいた。修行に出たが、ある山中に迷い込んで宿もない。古い辻堂に泊まった。夜もすでに二時くらいになっていた。多くの人が来る物音がして、かの堂に集まって酒宴をする。坊主は恐ろしく思いながらも、仕方がないので、浮かぬ顔で、円いしとねで尻を押さえながら踊った。明け方になり、天狗たちが帰ろうとするときいう、おまえは陽気でよいのみ相手になる、また必ずやってこい、口約束ばかりでは偽りになるといけない、質をとっておく方がいいだろう、と目の上のこぶをとっていった。坊主は宝を得たような心地がし、故郷に帰った。彼を見る人は感じ入り、親類たちはひたすら喜んだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿