2018年7月25日水曜日

梵天瓜

・大和国から産出する「ほてん」という瓜があり、延暦寺の最澄の弟子慈覚大師、天長十年四十のとき、身体が衰弱し、視野が暗くなった。もう命が長くないことを悟り、叡山の北の谷に草庵を結び、三年のあいだ行をして終焉のときを待っていると、ある世、夢に天人があらわれた。霊薬だと与えられた。その形は瓜に似ている。半分を食した。味は蜜のようであった。人があって告げるには、梵天王の妙薬である。夢からさめると、まだ味が残っていた。やせた姿は健やかになり、暗かった視野は明るくなった。その半片を土にまくと、完全な瓜が生じたが。いまの梵天瓜(マクワウリ)がそれである。元享釈書にある。(梵天と「ほてん」をかけた。)

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