2017年4月26日水曜日

片隅の黄金時代


「楢山節考から三十五年後」の冒頭部分から。

 黄金時代というものは町の片隅にあって、けっして時代全部が頭のてっぺんから足の爪先まで光っているのではない。
  演出、丸尾長顕。
  踊り子トップ、ジプシー・ローズ。
  ボードビリアン、トニー谷。
  照明、団鬼六。
  ギター、深沢七郎。
 これが昭和三十年(一九五五年)の日劇ミュージック・ホールの陣容である。
 壮観だった、と今でこそ言える。この黄金郷は、数寄屋橋の下に川が流れていた時代の日劇の一角にあった。裏町に行けば東京の空は電線だらけだった。

 団鬼六の名前が出てくるのが平岡正明ならでは。 もっとも、、団鬼六と深沢七郎が日劇で重なったのは、数ヶ月に過ぎないらしい。どちらも小説家としてデビューする前のことで、団鬼六の話によると、小説の話を深沢七郎としたことはなかったという。

0 件のコメント:

コメントを投稿