2012年12月11日火曜日

カフカと夢と唐十郎




ブロートのカフカ伝は、その神学的解釈と自分のことがやたらにでてくるので評判が悪い。しかし、美しい文章も多い。

 ある日の午後カフカが私の家に来て(私は当時まだ両親のところに住んでいた)、部屋に入る足音でソファーに寝ている私の父を起こしてしまった。カフカは言いわけすると思いのほか、手をあげてなだめるような恰好をし、爪先でそっと部屋を歩きながら、なんとも言えないやさしい声でこう言った。「どうか私を夢だと思ってください。」

また、

 カフカは私に、「一隻の小舟に乗って、水のない河床を走ってゆく」「すばらしい夢」を物語った。

前の一節は、ずっと昔、状況劇場をしていたころ、役者や仲間たちが宴会している部屋に入った唐十郎が、「あれ、おれの姿がないぞ」と言ったことを思い起こさせた(どこでこのエピソードを知ったかは忘れてしまった)。

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