晴れ。
暁に乗じて隅田川に出て、三囲神社にいたる。霧が立ちこめ、いまだ開闢せぬ太古の世のようだ。
『源氏物語』は淫猥な物語で、君子が読むものではないといわれてきた。
ところが、栗原某がいうに、『源氏物語』は王室の頽廃を嘆き、志を暗に述べたものだという。宮廷の醜状を明らかにし、貴族が跋扈するところを目の当たりに見せるのが作者の腕の見せ所だという。築紫に大夫監がおり、権力が国主よりも大きいのは、大権が下に移ったのを憤っている。岩倉高僧が源氏の招きに応じないのは、当世の僧徒に芯がないことを謗っているのだという。
0 件のコメント:
コメントを投稿