一月十四日。
曇り。
早々に原を立つ。去年、ロシア人、プチャーチンというものが台風に流されてここまできたという。しばらく行くと、右に浮島が原がある。山が遠望されることからそう名づけられたのだろうが、雲に覆われている。浮島は佐々木四郎と梶原源太が馬を争ったところである。さらに行くと吉原に至り、平家が水鳥に驚いた富士沼はこの近くだという。富士川を渡る。市場では富士の形をした石を売っている。むろん自然のものではない。中郷、新坂を過ぎると、山が海に転じる。松が馬の鬣のように並んでいる。蒲原、由井を過ぎると田子の浦である。倉沢で昼食に鮑を食べる。雲が晴れ始め、富士がようやく半分程姿をあらわす。峠は崖つたいで、下がすぐ海である。峠を越えると沖津である。右に清見寺がある。鱸島、相染川をへて江尻で宿す。
スティーヴン・ポリアコフのShooting the Pastを見る。BBCのドラマで、3話で約3時間。Perfect Strangerでも写真が重要な要素になっていたが、この作品では主要なテーマになっている。イギリスの田舎で膨大な写真のコレクションをもつ女性(リンゼイ・ダンカンが美しい)が経済的に破綻する。もっとも彼女自身はそれほど切迫しているとは知らず、共同で管理している男性が対応していたようだ。彼はエキセントリックだが、膨大なコレクションを唯一完全に把握している人間でもある。
ビジネス・スクールをつくるというアメリカ人が、押しかけてきて、立ち退きを迫る。マン・レイなどのいわゆる「芸術的な」写真はまとめて買い取るが、それ以外の誰が撮ったのかもわからないようなスナップ写真などは、ばらばらに売り払って処分するという。コレクションに携わっている者たちは、それが散逸することに耐えられない。話し合いの上、一週間の猶予が与えられる。ちょうどクリスマス・シーズンである。彼らは何百万枚もの写真を引き受けてくれるところを見つけられるだろうか。
ロラン・バルトがいっているように、写真には人を突き刺すところがあることを非常に説得力を持って描いている。またしても非常に上質なドラマで、アメリカのテレビ・ドラマはせき立てられるようだが、イギリスのドラマはゆったりとした呼吸を取り戻してくれる。
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