一月十六日
晴れ。
朝早く金谷を発ち、日坂嶺に登る。月が木立に残り、人影が悄然とした様である。曲折のある山道で、道が折れるたびに休息する。菊川に着くとようやく明るくなる。承久の乱で中納言宗行が北条氏に殺されたところである。小夜中山で夜泣石を見る。石面に南無阿弥の字が彫られている。空海が書いたというが信じがたい。掛川、袋井、細谷村を過ぎ、右の山に高天神城の跡がある。沙川橋を渡る。水が涸れて石があらわである。中泉で泊まる。
スティーヴン・ポリアコフの『ロスト・プリンス』(2003年)を見る。BBCのドラマで、2回、計3時間。1905年に生まれ、1919年に死んだイギリスのジョン王子のドラマ。自閉症の気があり、てんかんの発作も起こしたので、公の場に出ることはほとんどなかった。ロシアで革命が起き、騒然としたときであったこともあるが、すぐ上の兄との仲はよかったが、親の愛情は少なく、乳母とともにほとんどの時間を過ごした。2000年頃から悲劇的な存在として照明が当たるようになったらしく、このドラマもそうしたトレンドに乗ったものか、或いはこのドラマがそうしたトレンドを作ったのかははっきりしない。決して悪くはないが、ポリアコフの持ち味が生かされているとは感じられなかった。
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