2015年8月16日日曜日

はっとする瞬間

 デヴィッド・ブラッドリーの『マンドラの狂人たち』というアメリカ映画を見る。1960年代前半の作品だが、モノクロである。首だけになったヒトラーがまだ生きていて、性懲りもなく、新たに開発された毒ガスを使って、世界の滅亡をはかろうとする。

 なんの面白みもない映画だったが、不思議なことにモノクロだと、キッチュなものが本物らしく見えるふとした瞬間がある。特に、車などの滑らかな光沢が出てくると、ルビッチ的、フェリーニ的にも思われ、ここで監督が替わってくれたら、と思うがもちろんそんなことにはならない。

 もともとが複製芸術の、しかもなんでもない場面なので、アウラの残り香ということはないだろうが、骨董でいう時代がつく感じともまた違っていて、対照的に思い起こすのは日夏耿之介が編集した雑誌『奢灞都』のことである。もちろん日夏耿之介の趣味で統一されているから、一定の水準には達しており、内容的に嫌いなはずもないのだが、はっとする瞬間がないのだ。

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