・YouTubeのさるインタビュー番組で、ジャズ・ミュージシャンであり、どちらかといえば、私自身は、ジャズ批評や映画批評の著述やラジオのパーソナリティにお世話になることの多い菊地成孔の姿をぼんやりと見ていたとき(テレビ局のきちんと構成されたインタビュー番組で、菊地成孔のブロークンな感じが全然活かされておらず、すぐぼんやりし始めてしまったのだ)、もちろん知っている人には当たり前のことなのだろうが、青年時代私が『妖獣都市』や『夜叉姫伝』を夢中になって読んだあの菊地秀行が兄だということを聞いて、腰をぬかさんばかりに驚いた。何事についても、だから世の中がつまらないと思うわけではないが、私は驚くことは少なく、常になんらかの既視感がつきまとっているのだが、ここ十年くらいのあいだで、心底驚いた。それ以来、あの菊地と菊地が兄弟とはねえ、と何十度となく繰り返している。